任天堂
発表年:1981年
どんなゲーム?
- 一画面固定のアクションゲーム
- マリオを操作してコングに攫われたレディを救出する
- 建設中の高層ビルが舞台、様々な建設器具、設備がゲーム性の要素
目次
任天堂 ドンキーコング 旧レビュー原文
マリオを操り工事中の高層ビルにレディをさらって逃げたドンキーコングをやっつけるゲームです。
転がってくる樽やボルトの隙間を軽快にジャンプでよけてハンマーを取ったら一発逆転、次々とぶっ壊す爽快感もありアーケードで大人気でした。
この様々な障害物の対処を全てまかなうジャンプに重点が置かれており、その後の名作ファミコンゲーム『スーパーマリオブラザース』のアスレティックアクションに発展していくようで興味深い点です。
ゲームの原作者が何をおもしろいと感じどこを中心に据えるか?それを生かすのに何が必要か?等と進化の過程を垣間見てるようです。
25M地帯で最初のハシゴを登った状態からキャラのスプライト表示を変える事なく1ドットずらしてから右ジャンプすると何故かキャラの座標判定が最上段に現れ、条件を満たしてその面クリアというバグ技で遊んだりしてました。またクレイジーコングなる偽物もありました。
ドンキーコング ゲームレビュー
任天堂のアーケードゲーム初期の名作にしてマリオのデビュー作。さらに任天堂のゲームデザイナー宮本茂さんのデビュー作…という情報量多めの欲張りゲーム。要するに重要なゲーム作品です。
いたずらなドンキーコングがマリオの恋人のレディを攫って建設中の高層ビルに立て籠ってますので、マリオを操作してレディを救出に向かいます。もちろんドンキーコングも妨害活動を行います。建設中の工事現場ならではの建設器具や設備がゲームの要素そのものになっています。
操作
マリオの操作はレバー左右で移動、上下でハシゴの昇降。ボタンはジャンプ。レバー方向と組み合わせて左右にもジャンプ。
ステージにあるハンマーを取ると一定時間敵を攻撃できますが、ハンマーの振り上げ・打ち下ろしはフルオート。勝手にハンマーを上げ下げするのでプレイヤーは敵がハンマーに当たる位置まで移動して敵を叩きます。ハンマーは振り上げている時も当り判定があります。ハンマーを持っている間はハシゴでの上下移動はできません。
ステージ
ステージは4面あり25m、50m、75m、100mと高度で表現されています。当時の私の周りではステージを何故か25m地帯、100m地帯などと地帯で呼称していました。
25M
樽ジャンプ面。開始直後は水平に設置されていた鉄骨はドンキーコングのジャンプによる衝撃で綺麗に斜めになるデモがあります。ドンキーコングが上から樽を転がして接近を妨害します。ジャンプやハシゴの昇降で避けながらドンキーコングのいる最上部を目指します。
ハンマーを取れば樽を破壊できますが、一定時間でハンマーは消えますハンマーを持っている間はジャンプとハシゴの昇降はできません。ハンマーは振り上げた頭上でも当たり判定があります。
ドンキーコングの転がしてくる樽には2つの種類といくつかの進行パターンがあります。
2つの種類の樽は色で見分けます。
茶色の樽は通常のもので転がってくるのみです。重力の法則では転がるものはより低い方へと進みますが、このゲームの樽はマリオの位置を過ぎたら最後まで転がらずに適当に画面外にはけていきます。
大人の事情?
無駄な演算をなくす工夫!
もう一つは青い樽でドクロマークが刻印されています。この樽は重力の法則に則り必ずステージ最低点まで転がり、そこにあるオイル缶に入りひのこというキャラクターを生成します。ひのこは自立して動き回る火の玉で、ハシゴの昇降もできますがジャンプはできません。近づいたところをジャンプで飛び越せますが、気ままに動いているので急に逆方向に移動して着地点にいることも。なるべくジャンプで飛び越すことはせずにフロア移動やジャンプが必要な場所へ移動してかわしましょう。
樽の転がるパターン
- 高いところから低いところへ、坂の端まで転がって下の段に落ちるパターン。ごく普通に想定できるものです。
- 転がる途中のハシゴ伝いに落ちるパターン。ハシゴを昇降している際に完全に無防備な頭上に落ちてきます。これを避けるには樽がハシゴ箇所を通過してからハシゴを昇るのがまずひとつ。もう一つがちょっとした技で、ハシゴを昇り切らずにちょうどマリオの肩がフロアと同じ高さになる位置につければ樽はハシゴ伝いに落ちてきません。
- ドンキーコングが斜め下方向に投げつけてくるパターン。従来のように床に転がすのではなくいきなり下のフロアに樽を投げつけてきます。これが一番怖い攻撃です。
この面のゲーム性は樽をタイミングよくジャンプでかわして進むものです。最上部まで登ればクリアとなります。
50M
ベルトコンベア面。画面中央の炉?からひのこが湧き出します。ベルトコンベアのフロアに乗るとコンベアの流れる方向に自動移動します。逆方向への移動は抵抗となり遅くなりますがジャンプの速度は一定です。
コンベアの流れる方向は載せられている荷物の移動方向で分かります。2段目のコンベアは移動方向が突然逆になったりします。荷物をジャンプで飛び越える瞬間に逆移動されたらミスになります。
この面のゲーム性は制御不可強制移動です。ドンキーコングのいる最上段に到達すればクリアです。
ちなみにファミコン版にはこの50m面はありません!
ハードの容量上の事情!
75M
エレベーターと段差ジャンプアップ面。ハシゴとエレベーターでの昇降移動とジャンプによる段差移動がメイン。ドンキーコングの背後から跳ねるジャッキが常に一定の速度で排出されています。ジャッキが跳ねる音と落下する音が面の雰囲気を支配します。
画面左半分には二基の昇降エレベーターとハシゴ一対あり、ひのこが一体待ち構えます。特に問題なくかわせます。
画面右半分には一段づつ上がる段差とジャッキが一定の間隔で上から落下してきます。ジャッキが落下していくタイミングを見ながら段差をジャンプで昇っていきます。この場面、今思えばまさに後のスーパーマリオの原型に思えます。タイミングを測ってジャンプで次の足場に移動する。字面だけだと完全にスーパーマリオです。
ドンキーコングのいるフロアに上がると後はレディのいる最上部を目指します。敵は跳ねながら迫るジャッキです。ジャッキの跳ねるパターンと位置は一定ですので、ジャッキが跳ねて下を潜れる場所を見つけ、ジャッキをやり過ごした後最速で最上部へのハシゴを昇ってクリアです。
この面のゲーム性は画面右半分が上下昇降、左半分がジャンプ移動、最上段はタイミングの見極め、という欲張りな構成です。
100M
ボルト踏み抜き面。ボルトは4つのフロア左右に2個づつ全部で8個あり、全てのボルトの上を通過して踏み抜く必要があります。画面全部を満遍なく通過するチェック型のゲーム性です。ドンキーコングのいるフロアにもボルトがありますが、ドンキーコングにもしっかり当たり判定があります。背後は通過できません。
妨害してくる敵はいつものひのこと思いきやなんだか形が違う。おじゃま虫というキャラのようですが、ひのこと同じ動きをします。
全てのフロアを歩き回るので敵のおじゃま虫との遭遇が他の面より多くなります。画面に配置されているハンマーの使い時をこの面だけは真面目に考えるかもしれません。
鉄骨を支えるボルトを全て踏み抜けばドンキーコングは真っ逆さまに落下して頭を強打、気絶してマリオはレディを救出します。
ドンキーコングはマリオのペットという設定ですので、マリオがドンキーコングを懲らしめる、という体です。しかしマリオがミスをした場合、頭上にしっかり天使の輪が浮かぶのは飼い犬に手を噛まれるどころではない惨事ではないでしょうか。
マリオブラザースでのミスは驚いて真っ正面を向きながら画面下に落下!
時代時代の表現の主流ってものがあるんだよ!
100m地帯をクリアしたら25m地帯にループ、難易度が上がります。
活き活きとしたマリオの描写
ゲーム内を動き回るマリオの描写がとても活き活きとしています。下記の要因がその印象をもたらします。
- 左右に走り回るキャラクタースプライトパターンが多い
- 左右に移動するとギュッギュッギュッっと足音が響く
- ジャンプしたら無駄に効果音がビヨヨヨ〜ンと響く
- ハシゴの昇り終わり・降り始めのキャラクターアニメパターンが多い
上記の特にハシゴの昇降は実際にハシゴを使うように身を屈めて時間を使います。
これらキャラのモーションや効果音へのメモリの潤沢な使い方は当時としては画期的というか異例です。
マリオがゲームの中で実際に息づいて動き回っているような描写。おそらくですがディレクター・デザイナーの宮本さんのアイデアだと思います。任天堂内で別の部署からの抜擢でゲーム作りに携わるようになった宮本さん。技術屋思考では絶対に出てこない発想です。
技術屋はいかに処理を簡略化してリソース(資源)を節約するか?を考えます!
当時のゲーム作りのセオリーをちゃぶ台返し!
それを承認する当時の任天堂開発陣やトップも凄かったって話し!
コンパクトに詰め込まれた様々なゲーム性
ステージ(面、地帯)の説明の折、そのステージのゲーム性を簡潔に表現しました。改めて振り返ると
- 25m 樽ジャンプ面 タイミングよくジャンプで障害を避けて進む
- 50m ベルトコンベア面 制御不可強制移動の床がある
- 75m エレベーターと段差ジャンプアップ面 画面右半分が上下昇降、左半分がジャンプ移動、最上段はタイミングの見極め
- 100m ボルト踏み抜き面 画面全部を満遍なく通過する
4つのステージにこれだけの要素がコンパクトに詰め込まれています。またハンマーを取ることで追うものと追われるものの関係が入れ替わる一発逆転性も重要な要素です。当時のゲームとしては詰め込みすぎなくらいで、面白くない訳ないのです。今でもブラッシュアップすれば十分面白そうなくらいです。今や世界的なゲームデザイナーとなった宮本茂さんはデビュー作から既にらしさがあったのです。
25m地帯 一撃クリアのバグ技
スタートから1段上がった段からある操作を行った後下の階に向けてジャンプすると、下の階をすり抜けていきなり面クリア判定となります。
このバグ技を初めて見たらまず驚くしょう。ステージが始まった出だしでいきなりクリア!の鮮烈な驚きったらありません。まさに驚愕。ちなみにこのバグ技は後期基盤では修正されているのでできないようです。またファミコン版などでもできません。
やり方
- 最下段フロアから上階フロアに架かるハシゴを昇りきります。昇り切りマリオがこちらに背を向けた表示を維持します。
- こちらに背を向けた表示のまま、気持ち1ドットだけ移動するような感覚でレバーを右に入力します。するとマリオがこちらに背を向けた表示のまま、僅かに右にずれるように移動したら準備が整います。
- 背を向けた状態のまま、その場から右にジャンプします。フロアの右端を越えて跳んでしまうのでマリオは下のフロアに落下して床に激突…しない?!マリオの身体はフロアに激突せずあたかもそこに何もないような扱いで床を突き抜け、あろうことかマリオの首から下が画面最上部に出現します。マリオの位置判定座標が首の下の胸辺りにあるのか、またこのステージ(100m以外?)のクリア判定がマリオがある座標以上にあれば成功としているのか、諸々定かではありませんがこれで25mステージはクリアとなります。
この技のコツはレバーを弾くような一瞬の入力です。筐体によりレバーの絞りや遊びはまちまちなので、最適な入力加減は手探りです。もしこの入力でマリオが背を向けた状態から右を向いてしまったら失敗です。一度ハシゴを少し降りてから昇り切って背を向けた状態からやり直します。
このバグ技はいつやっても新鮮な驚きと妙に達成感があるものでした。
これやったことある人は同年代認定!
マニアックで狭すぎる認定条件だな…
番外遍 クレイジーコング
ドンキーコングには偽物が存在していました。その名もクレイジーコング。キャラや構成など丸パクリもいいところ。このゲームの詳細はより詳しいサイト様にお任せするとして、判る範囲での本家との違いは
- キャラやステージ構成物の色
- 効果音(SE音)
- マリオがジャンプするとホヤッと喋る
- 火の敵が共通化されている
- BGMがない
- コングの顔が可愛くない
- コングの背が少し高い
- レディが動かない
などが挙げられます。マリオがホヤッと喋る件、どうやら日本物産の名作ゲームクレイジークライマーに出てくる敵キングゴリラの声らしく、言われてみれば確かに納得。目を真っ赤に充血させて殺る気満々でクライマーの横腹にパンチを繰り出してくるあのゴリラの声です。
あのゴリラ、短距離を普通に瞬間移動するんだぞ!
話を戻します!
今現在の知識で改めてこのゲームを見返してみると、このゲームが出回っていた稼働当時には判る訳ないある事が分かります。このクレイジーコングはドンキーコングの潤沢・贅沢な部分(あるいは無駄な部分)を徹底してそぎ落としてかなりデータ量を圧縮しているように見えます。BGMがない、火の敵の共通化、レディが動かないなどの部分です。また効果音も単音の音階でも分かりやすく出来ています。
ゲームのデータ量が減るということはハードウェアが本家よりも低い性能でも動きます。その辺の事情に詳しいサイト様によれば、基盤自体も本家よりも簡便化されていたらしく汎用の筐体で動かせて非常に都合がよかったとのこと。道理で当時はどこのゲーセン行ってもこのゲームばかりで、挙句に駄菓子のスタンド筐体でも見かけるくらいクレイジーコングは出回っていました。
ドンキー:クレイジー、見かける比率は1:4くらい!
下手すりゃもっと!